思わず二度見必至!衝撃の異世界転生モノ『アラフィフ転生』

主人公と作者のダブル「アラフィフ転生」ストーリー。

久しぶりにマンガを読んだ。普段、本屋を運営している身であるが、仕事場に売るほど本が溢れかえっていると、なんともマンガ本を手に取る機会が少なくなってしまうのだ。

強烈な表紙に思わずクリック・・・

そして今回、頂いたお題が「マンガ」ということで、改めて業界の最新トレンドをインプットすべく本屋の若手スタッフに直近のトレンドを聞いたところ、「異世界転生モノ」というキーワードが返ってきた。

「異世界転生モノ」とはどういうものなのか?

おおざっぱに説明すると、登場人物が何らかのきっかけにより、その登場人物がいる世界とは違う次元の世界に行くことから始まる作品ジャンルのことで、その人気は日本国内に留まらず、いまや海外でも「isekai」という名前で通用するほどの大ブームであるそうな。

なるほど。最近だと『東京卍リベンジャーズ』、昔だと『王家の紋章』や『漂流教室』、もしかしたら『ドラえもん』も、ある種の異世界転生ものと言えるのかもしれない。

そんなわけで早速、「異世界転生モノ」で検索をしてみたところ、強烈なサムネイル画像が目に止まり思わずクリックしてしまった作品がこれ。

『アラフィフ転生~少女漫画の世界で「オモシレー女だな」と言われ求婚されまくりました。』

『アラフィフ転生~少女漫画の世界で「オモシレー女だな」と言われ求婚されまくりました。』1巻表紙 ©湊ユウキ/新潮社

オフィシャルの説明文を拝借すると、

更年期に悩まされるアラフィフ兼業主婦・森野舞子(48)。倦怠期の夫と反抗期の娘と暮らす、普通の母親として生きていたけど……。ある日、街角で何かとぶつかり、目が覚めると、少女漫画『マイコと宮廷学園』のヒロインの姿になっていた!!わけもわからず、パニックになる舞子。そこに、手を差し伸べたのはなんと宮廷学園人気NO.1のあのイケメン王子だった。「この胸の高鳴りは更年期? それともト・キ・メ・キ――!?」 新感覚異世界ラブコメ開幕!!

湊ユウキ/著 『アラフィフ転生~少女漫画の世界で「オモシレー女だな」と言われ求婚されまくりました。~』1巻(新潮社)

https://www.shinchosha.co.jp/ebook/F911611/

・・・何がなんだかわからんまま、第一巻をポチっと買ってみたところ、予想を上回るエクストリーム「異世界」っぷりにぶっ飛ばされた。

剛腕なストーリー展開で読者を「異世界」に

日常生活では更年期障害に悩まされる主人公・森野舞子『アラフィフ転生〜』1巻より ©湊ユウキ/新潮社

まず、主人公が最初に異世界に迷い込むシチュエーションからどうかしている。ある朝、平凡な主婦が寝坊をしてしまい、うっかり食パンをくわえながら「いっけない 遅刻遅刻ぅ!」と道を走っていたら何かにぶつかって気絶。気が付くと、貴族だらけの学園で目の前にキラキラ王子様が手を差し出してくれていた、という無茶な状況からスタート。

もはや都市伝説ともいえる学園少女マンガのベタ設定だが、主人公は更年期障害を抱えたアラフィフ主婦なのだ。

イケメン王子・ヒカルとの出会いのシーン『アラフィフ転生〜』1巻より ©湊ユウキ/新潮社

さらに突然、もう一人ワイルドな魅力を携えたライバル王子様が物語に乱入。彼女を巡る恋の争奪戦が絶好調に繰り広げられる、という、錯乱した夢みたいなお話が繰り広げられ、第一巻から読み手をまさに異世界へ誘ってくれる。

そして、主人公の舞子は、しばしば本人の意思とは無関係に元の日常の生活に戻されてしまうのだが、彼女が再び学園世界に戻るためには、「バナナの皮で滑る」「坂道で転がるリンゴを追いかける」といった"少女漫画あるある"をクリアしないと戻れない、という決まりごとになっていて「なぜ主人公の舞子が少女漫画の世界に舞い込んだのか?」そして、「なぜモテモテ女子になっているのか?」今のところ、そこにも説明は一切なし。あらゆる過程をすっとばして、力ずくでグイグイとストーリーが展開されていくのだ。

意思とは無関係に元の日常の生活に戻される主人公の森野舞子『アラフィフ転生〜』1巻より ©湊ユウキ/新潮社

そんなわけで、主人公の舞子は「ベタ」と「現実」を反復横跳びのように行き来するわけだが、このマンガの面白いところは、舞子にとっての憧れとも言える学園世界を、絶対的なユートピアとは描いていないところにある。

女子にとっての憧れとも言える”少女漫画あるある”をクリアしていくなかで、もしかしたら、自分の幸せはベタな憧れの世界ではなく、元の旦那と娘に囲まれた平凡な現実にこそあるのではないか、そんなことも微か​に示されてくる。

まさかの作者も「アラフィフ転生」

また、その表現方法にも注目したい。主人公・舞子がもともと過ごしていたリアル世界は現代風の絵柄で描かれているのに対して、彼女が飛び込んだ学園世界は、いわゆる昭和レトロな少女漫画タッチで描かれている。“絵柄”というマンガならではの特徴を効果的に利用することで、パラレルワールドを表現するギミックが使われており、読者を飽きさせない。

さらに面白いのは、本作の著者である湊ユウキさん自身が51歳、まさにアラフィフにして今回が新人デビュー作品であるそうで、本作の制作自体が​著者自身にとってのリアル「異世界転生」の物語である点も興味深い。

現在のところ、まだ第一巻しか刊行されておらず、今後の展開がどうなるのか読めないところであるのだが、主人公・舞子と著者の湊ユウキさん、これからの二人のアラフィフの物語を見届けたいと思う。