今でも「全然、悔しい」。デビュー12年を迎えた[Alexandros]を突き動かすもの

2010年にデビュー以降、英語と日本語のハイブリッドな歌詞と、UKロックを思わせるバンドサウンドで、「ワタリドリ」や「閃光」など、数多くのヒット曲を生み続けてきた[Alexandros]。

メンバーでは、川上洋平(Vo/G)と磯部寛之(B/Cho)の2名が帰国子女ということもあり、常に世界を視野に活動し、白井眞輝(G)、庄村聡泰(Dr)も含めた4人のメンバーで日本のロックシーンをけん引してきた。

メジャーシーンを走り続ける中、2020年には庄村が「勇退」し、2021年にはリアド偉武が加入し注目を集めた。デビューから10年が経ち、新しい一歩を踏み出した4人に、これまでのキャリアについて振り返ってもらった。

発売から1年後にヒットしたメジャー・デビュー曲

[Alexandros]の代表曲といえば、多くの人が思い浮かべるのは「ワタリドリ」ではないだろうか。メジャー・デビューシングルであり、アサヒビールのCMにも起用。2019年にはMVのYouTube再生回数が1億回を突破した。

川上洋平(Vo/G:以下川上):発売したときは、ファンにはちゃんと届いている感じはしたんですが、そこまで大きな反響はなかったんです。

川上洋平(Vo)

川上:でも、次の年にCM曲として選んでもらい、そこで一気に広がりました。CMのタイアップとして書き下ろしたものではなくて、「この曲が好きなので使わせてください!」と言ってもらえての起用でした。純粋に曲を気に入って使ってくださったので嬉しかったですね。

ヒットしたのはリリースから1年後。しかしその前から、ライブなどで予兆はあった。この曲自体「スタジアム級のでっかいステージ」で演奏できるような曲を作りたい、そんなことを意識しながら制作されたものだった。

川上:「ワタリドリ」はメジャー・デビュー曲でもあったので、スケール感をすごく意識して作りました。イントロのギターリフとか、音作りとか、大きなステージで映えるような隠し味をいろいろ仕込んでいました。だから発売する前からライブでは爆発力があったんですよ。

白井眞輝(G)

白井眞輝(G:以下白井):「ワタリドリ」がヒットしたのは、ちょうどフェスでトリをとらせてもらえるようになった時期なんですよね。自分たちのホームじゃない場所でも響いている実感がありました。

リアド偉武(Dr)

リアド偉武(Dr:以下リアド):僕はインディーズ時代からメンバーと付き合いがあったのですが、そばで見ていても、このあたりから[Alexandros]がバンドとして高いゾーンに入ったように感じました。

磯部寛之(B/Cho)

磯部寛之(B/Cho:以下磯部) :客観的にそう見えていたんだ。

リアド:そうそう。2019年以降、サポートでドラムを叩くようになってからは、「ワタリドリ」の力を目の当たりにするようになりました。ライブでこの曲をやると、お客さんがジャンプして波打っているんですよ。初めて見たときは「すごい光景だ……」って(笑)

「分かりやすい曲」の価値

彼らは「ワタリドリ」の前年、[Champagne]から現在の[Alexandros]に改名している。仮に改名前を「第1期」とするなら、「Starrrrrrr」がその時代の代表曲のひとつになるだろう。「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に初出演した際に披露したのもこの曲だ。

川上:3枚目のアルバム(『Schwarzenegger』2012年)をリリースした後、「どうしたらもっと活動の規模を大きくできるか?」という気持ちが芽生えました。届けられる人の数をもう1桁増やせるような曲を作りたかった。

川上:自分たちの信念を曲げたわけじゃなくて、規模の大きな場所でやる曲の種類があるんですよ。自分たちの中で、そこに届かない不満がありました。

磯部:「Starrrrrrr」にもその悔しさがにじみ出ていたと思う。もっと多くの人に聴いてほしいし、世界中でライブをやりたいのに、そこにいける楽曲を当時は持っていなかった。

川上:僕らはスケール感のある曲が好きだし、そういうアーティストの楽曲を聴いてきたので、自分たちも表現として規模感を広げたくなったんです。

白井:コアなファンだけじゃなく、テレビで僕たちを知った人たちが盛り上がれるように意識しましたね。

川上:ロックとポップス、どっちも好きなので、分かりやすい曲を毛嫌いしているわけでもない。一瞬で人を引きつけるポップスの要素は、自分たちの楽曲においてかなり意識している部分です。

磯部:どっちか一方だけだと、飽きる部分もありますし。バランスとるのを意識するのが楽しい。

川上:売れるためにしょうがなくやっているとかじゃなくて……うん、楽しみでやっていますね。結果的に「Starrrrrrr」で[Alexandros]を知ってくれた人も多いので、スケール感をつかむきっかけになりました。

磯部:「広い」曲は、ライブで演奏すると本当に気持ちいいんですよ。とはいえ国内だけでなく、本当は全世界でもっと広く聴いてもらいたい。いまだに悔しいと思う瞬間は多いので、満足するとかはないです。

今でも「全然、悔しい」

2010年のデビュー以降、すさまじい勢いで日本のロックシーンを駆け上がったような印象がある彼らの口から、「悔しさ」という言葉が出たことが意外だった。何がそこまで彼らを駆り立てるのだろうか。

川上:もう単純に僕らを知らない人がいっぱいいるからですね。せっかく音楽を作っているのだから、[Alexandros]を知らない人たちにも聴いてほしい。それだけの理由です。海外はもちろんですけど、日本でもライブをやったことない場所はあるし。

リアド:うんうん。僕から見ても、そのスタンスはずっと変わってない。

川上:海外旅行したとして、「そこにギターあるからあの曲歌ってよ」と言われるようになりたいっていうか。初めて会った、日本語も分からないような人からリクエストされたい。言葉とか国境を越えていけるのが音楽の力だと思うんですよ。

白井:めちゃくちゃ素直。

川上:そうそう。めちゃくちゃ素直なバンドです。自分たちがやりたいことをやっているわけで、聴いた上で気に入ってもらえないならしょうがないというか。「無理して聴いていただかなくて結構です」って。だから、ポップスを意識しているとはいえセルアウトしているつもりは一切ないです。

磯部:洋平が作った曲を最初に聴いて、「かっけえ!」と思ったら、やっぱり共有したくなるし、それがみんなに愛されたら最高。常に「この曲いいんだよ」って思いながらやっていますね。

川上:ラーメン屋に近い感じですよ。こだわりが強い頑固な店主がやっていて、「うちのラーメンが気に入らないなら、別に食べなくていいよ」っていう(笑)。でも二郎系みたいな複雑なコールはない。そこがポップスの部分かもしれないですね。

頭から計算が吹き飛んでからが面白い

生み出す作品そのものではなく、売り出し方やマーケティング的なアイデア、経営者目線をアーティストに求める傾向が年々強くなっている。また、「名曲の秘密を公開!」とうたうような楽曲分析の動画もYouTubeに溢れるようになった。しかし、[Alexandros]はそういった「計算」とは無縁だ。

川上:計算が一番苦手だし、嫌いですね。小ざかしい(笑)。セッションで生まれてくるメロディーやアレンジがロックバンドの醍醐味ですから。4人だけしかいない空間でお互い負けないように音を鳴らして、iPhoneで適当に録音して、後で聴き返したら「こんなの歌ってたっけ? すげえ格好良いな!」みたいな。そんなことばっかりだから、計算が入る余地がない。

リアド:即興的な要素も多いですしね。

川上:結局曲の核の部分には、偶発的に出てきたアレンジが残ることも多い。オリジナリティーって、計算ではなく無意識的な部分に宿ると思うんです。白井くんは音楽の専門学校に行っていたから知識も豊富ですけど、頭おかしくなって知識が飛んだときの方が面白かったりするんで(笑)

白井:そうなの?(笑)

今でも、本気でぶつかり合う4人

冒頭でも触れたが、[Alexandros]は2020年に大きな転換期を迎えた。ドラマー庄村聡泰が勇退。翌年、庄村の休養中にサポートとしてドラムを担当してきたリアド偉武が正式加入し、「第3期」へと踏み出した。

「But wait. Cats?」初回限定版 / UNIVERSAL MUSIC JAPAN

もちろんこの間にはコロナ禍もあり、思うように活動ができなかった時期でもある。前作「Sleepless in Brooklyn」から約3年8カ月振りのオリジナルアルバムとなるのが「But wait. Cats?」だ。

川上:コロナ禍でふさぎ込んだことはなかったですね。ただ「ライブやりてぇな」と思い続けました。その反動があったから今回のアルバム制作はとにかく楽しかった。スタジオで音をかき鳴らして「音でけえ!」って言いながら、耳栓も買って。お互いの音を「格好良いな」と思いながら作りました。

白井:レコーディングでもライブでも「出せたか、出せなかったか」というのが個人的には大事なんですけど、今回はやり尽くした。前のアルバムから4年近くたっているので、フラストレーション以外にも、たまっているものもありました。それを燃料にして走りきった感じですね。

磯部:出し切りましたね。プロデューサーさんが新しい風を吹かせてくれて、メンバー以外の意見が入るのも刺激的でした。

白井:クリエーティビティーに溢れたレコーディングだったと思います。

リアド:正式メンバーとしては初めてのレコーディングだったんですけど、おのおのが「こんなことできる?」とか「こういうアプローチはどう?」とか、色んな意見をくれるので、自分が伸びていく感じもありましたね。

磯部:今回はパソコンを使って作った曲がほとんど無くて、膝を突き合わせて「ああでもない、こうでもない」って言いながら進めていきました。

磯部:だから、今回は、ミックスやマスタリングで音を整える前の、演奏の時点でワクワクするような音でとれた曲も多かった。4人でバーン!ってアンプを鳴らしたときの気持ちよさを改めて感じました。「俺、すごい楽しいことしてんな」って(笑)

リアド:レコーディングを通して「このバンド全員がドラマーだ」と思ったんですよ。まー君(白井)はそもそもドラムを叩けるし、ヒロくん(磯部)も洋平(川上)も頭の中で常にリズムが鳴っている。[Alexandros]は、リズムが大事な要素になっているからこそ、一緒に音楽を作っていくのが刺激的で面白かったです。

磯部:ファーストアルバムの頃みたいな原始的なところもあるし、肉体的に作ったとも言える。とはいえ、結成から10年がたっているので、経験値やスキルが上がっているのも実感できて。原点感がありつつ、新しさもある仕上がりになりました。

川上:お互いいいもの作ろうと思っているから、今でも本気でぶつかります。そういうのも含めて、やっぱりこれがバンドだよなと再認識できました。ニューノーマル的な暮らしからするとNGかもしれないですけど、自分としては早くダイブしたい。お互いの声だったり、音だったりをぶつけ合って、共鳴していくのがロックバンドの面白さなので。

Staff Credit

Text : 張江浩司

Photo : 朝岡英輔

Movie : 二宮ユーキ、内村友海

Edit : 嘉島唯(LINE)、前田将博(LINE)

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Written by

LINE NEWS編集部