主人公が踊る姿に小学生の私は号泣した バレエ漫画『ユニコーンの恋人』

たんぽぽ・白鳥久美子を夢見る乙女にした懐かしの作品

小学生の頃、近所のお姉さんの家にはたくさんの少女漫画があった。そこで出会った漫画たちが、私を立派な夢見る乙女にしたと言っても過言ではありません。

「現実はマンガのようにはならんぞ」本当の意味でそれに気づくのは、東村アキコ先生の『東京タラレバ娘」を読んだ時です。

しかしそれまでは、30歳を越えてもなお、雨の日にリーゼントの不良が捨て猫を拾ってやしないかと雑居ビルの裏を覗き、はたまたメガネを取ったら「お前かわいいじゃねえかよ。ムカツクな」と言われることを期待して生きていました。

今日は、そんな乙女モード全開だった小学生の頃に、どっぷりハマっていたバレエ漫画、『ユニコーンの恋人』をご紹介したいと思います。

筆者が大切に保存していた『ユニコーンの恋人』 ©星合操

天涯孤独、秘めた才能の持ち主…これぞ“ザ!少女漫画”

主人公は少女ハニー。唯一の肉親だった父親に先立たれると、ハニーの引き取り手としてやってきた父親の友人を名乗る男性にいきなりバレエ学校に入学させられるのです。

入学早々、意地悪な先生に何か演目を踊ってみろと言われるハニー。父親にバレエの手ほどきは受けていましたが、そんなものは知りません。バカにされ笑われる日々が続いた、ある日。心の支えにしていた、母親の形見の汚れたトゥシューズを川に投げ捨てられると、ハニーのなかの何かが弾けました。

「踊れるもん、オーロラ姫もシンデレラも、もう覚えたもん」

泣き叫ぶハニー。ハニーは人知れず練習をしていたのです。

「なら証明してみなさいよ」

ハニーは涙を拭って、みんなの前で踊って見せます。裸足で。え、裸足で!? はい。裸足でー!!そしてそこで証明されるのは、意地悪な先生も認めざるを得ない、ハニーの素晴らしいバレエの才能なのでした。

主人公・ハニーの才能に先生が驚くシーンは“ザ!少女漫画” ©星合操

いかがです? “ザ!少女漫画”でしょう? いきなり天涯孤独になってバレエ学校に入るとか、意地悪されるけど、本人が気づいていないだけで才能がすごいとか、乙女心をくすぐりまくりです。

「まだ踊ったことがないだけで、私にもバレエの才能があるかもしれないな。あと、どうしてうちの両親は健在なの?」影響されすぎた小学生の私は、そんなヤバイ発想をするまでになりました。

絶体絶命の状況のなか、奇跡のバレエを舞うハニーの姿に号泣

この後ハニーは、死んだと思っていた母親が生きていたということを知ります。大事なコンクールの最終審査を翌日に控えていましたが、居ても立っても居られず、あのトゥシューズを持って会いに行きます。

ところが母親には、新しい家庭が。「私はあなたの娘です!」そう伝えても冷たくあしらわれるハニー。ショックのあまり街を彷徨い、雨に打たれ倒れるハニー。絶体絶命。

目覚めるとコンクール当日の朝です。ハニーの出演を諦めた関係者たちの前に、泥に汚れ髪もバサバサ、身体はふらふらのハニーが登場します。無理だ、こんな様子では踊れない。

ところがハニーは踊るのです。『ラ・シルフィード』を! あの悲しい妖精の物語を! しかも相手もなしに1人で! リフトも男性の支えなしに飛んで見せます。え、奇跡! 

見開きで表現される1人リフト ©星合操

「踊ってさえいれば」ハニーの悲壮な思いに涙が… ©星合操

踊っていれば悲しくない。ハニーの心が見えてきます。ハニー、ああ… あなたは今どんな想いで踊っているの? 孤独だね。キレイだね。悲しいよ。小学生の私は号泣しました。

しかしその時、憧れのダンサーであるアルフィーが…。そんなアルフィーをはじめとする、ハニーを取り巻くイケメンたちも見どころの1つです。

たんぽぽ・白鳥久美子の乙女心を育んだ『ユニコーンの恋人』

やがて、タイトルの一部にもなっている「ユニコーン」は、ハニーの亡き父親が書いた、未完の創作バレエだと言うことも明かされていきます。

いつの日か、父が創作したバレエを踊ろうと決意するハニー ©星合操

夢、憧れ、涙、笑い、友情、ライバル、恋、母親、怪我、モダンバレエ… 溢れんばかりのドラマとハニーの成長に、釘付けになることうけあいです。

余談ですが、大学生の頃、そんな憧れのバレエレッスンを初めて受けた時、鏡に写った自分の姿を見て驚愕しました。

「なにこれ!?ハニーじゃない! 

ずんぐりむっくりおばさんがいる!!」 

憧れと現実の狭間で揺れる私の乙女心を育んだ少女マンガ。

それが『ユニコーンの恋人』なのです。