「スイッチがないと疲れる」きゃりーぱみゅぱみゅと"ありのまま"の自分

「人間、型にはまってないと『変わっちゃったね』って言われる。それがすごく嫌なんですよね、めんどくさ!って」

「"原宿系"を守らなきゃいけないのかって考えた時期もあったし。世間のイメージがいまだに"原宿のデカリボン"なんです(笑)」

「PONPONPON」で鮮烈デビューを飾り、「つけまつける」「ファッションモンスター」「原宿いやほい」など多くの代表曲を持つきゃりーぱみゅぱみゅ。

2021年、5thアルバムとなる「キャンディーレーサー」をリリース。2022年には、世界最大規模の野外音楽フェス「コーチェラ」への出演も果たすなど、国内外を問わず活動の幅を広げている。

「キャンディーレーサー」ジャケット(提供:日本コロムビア)

高校卒業間近に決まったデビューから11年。

読者モデルから日本を代表するアーティストにまで駆け上がったシンデレラストーリーの裏には、"きゃりーぱみゅぱみゅ"としての責任感、本来の自分との距離感に悩みながらも成長を続ける等身大の姿があった。

海外で人気爆発

国内は賛否両論

ファッションに興味を持ち、読者モデルとして活動を始めた高校時代。

後に自身が所属することとなるアソビシステムの社長との出会いが、アーティストデビューのきっかけとなった。

「"なんか面白そう"って感じでデビューが決まったし、最初はもっと企画っぽいノリだと思ってたんです」

「初めて『PONPONPON』を聞いた時だって、大好きな中田ヤスタカさんに1曲作ってもらえて、イエーイ!みたいな(笑)」

「PONPONPON」MVサムネイル(提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

「そこからもう11年…こんな展開は自分でも超想定外で」

高校卒業を控え、服飾系の専門学校に願書も提出していた。しかし「1年待ってほしい」と事務所社長から相談され、2010年、期間限定のつもりで"きゃりーぱみゅぱみゅ"が始動した。

「今でこそ個性的って言ってもらえますけど、デビュー当時はまともじゃないやつみたいに思われてましたね」

「そもそも自分は地下にいるタイプの人種というか、サブカルチャーの人間だし。メジャーで売れるタイプでは絶対ないと思っていたから」

国内での反応は賛否両論、SNSにもさまざまな声があふれた。

新人としてのあいさつ回りで地方のラジオ局を訪ねると、変わった名前だと鼻で笑われたこともあったという。

「でもその2年後にまたあいさつしに行ったら、めっちゃペコペコされました。『売れると思ってたんですよ〜』って(笑)。人って変わるんだなっていうのを感じましたね」

一方で、海外での反響は想像以上だった。

「100%KPP WORLD TOUR 2013」

2011年7月にYouTubeで公開した、当時には珍しいフル尺MVが爆発的に再生され、2年後の2013年には初のワールドツアーを敢行。

国内と海外での活動を同時にこなさなければならない展開に、誰よりも驚いたのはきゃりー自身だった。

「海外進出って、国内で成功した次のステージだと思ってたんですよ。国内と同時に海外進出って…」

「いや、私のことなんてみんな知ってるわけなくない!? ライブなんて観に来るわけなくない!? っていう気持ちが本当に強くて」

大きなプレッシャーに襲われ、楽しさよりも苦痛が勝っていたと当時を振り返る。

「100%KPP WORLD TOUR 2013」

心身ともに過酷なツアーだったが、いざステージに立つと不安を吹き飛ばすほど多くのファンが待ち構えていた。

これまで訪れたこともなかった、言葉も通じない土地で受けた温かい声援が自信につながっていった。

「犯罪者でもないのに…」

「PONPONPON」から、最新曲の「メイビーベイビー」まで、楽曲はすべて音楽プロデューサーの中田ヤスタカが手がけている。

2015年に発表した楽曲「もんだいガール」の歌詞には、当時の思いが色濃く反映されているという。

「もんだいガール」ジャケット(提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

きっかけは、熱愛報道などで週刊誌に追いかけまわされ、ついには仮免教習で縁石に乗り上げる写真まで撮られてしまったきゃりーの"愚痴"だった。

「中田さんに『犯罪者でもないのに、なんでこんなコソコソしてなきゃいけないんですかね?』『年頃なんだし、デートくらいしません?』って愚痴ったんです。そうしたら『もんだいガール』って曲ができてて」

手渡された「ただ恋をしてるだけなの」「機械みたいに生きてるわけじゃない」という歌詞を読み、すぐに自分のことを歌った楽曲だと察した。

思いをくみ取ってくれた中田の優しさに、涙があふれそうになるほど胸を打たれた。

「『キライなことで笑うより ステキなことで泣きたいわ』って歌詞も本当に素晴らしいんですよ」

「当時SNSでの発言を批判されて、そういう部分も歌詞に入っていて。ライブで歌ってもすごいスカッとする曲ですね」

誰かにスポットを

当ててたらなにもできない

2018年に発表した「きみのみかた」では、これまでの"原宿カワイイ"というイメージを封印し黒髪に。

楽曲のイメージに合わせたビジュアルだったが、「原宿系、やめちゃうんですか?」「このまま大人路線に変更するんですか?」と聞かれ、衝撃を受けたこともあった。

「きみのみかた」ジャケット(提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

「それまでは"原宿"とか"カワイイ"っていうパブリックイメージに、自分自身とらわれてしまっている部分も多少はあったかもしれないです」

「でもそんなことを気にして、誰かの求める"カワイイ"にスポットを当ててたらなにもできないんですよ」

「"カワイイ"って正解がないんです。海外でも"カワイイの先駆者"みたいな扱いをされたりするけど…全然違う!全員の望む"カワイイ"には応えられないし」

「だからやっぱり自分の信じるものが一番だなって」

自分に特別な力がある

なんて思っていない

自分の信じる"カワイイ"を表現しつづけた11年。

2022年に出演したコーチェラでの大舞台では、自身も経験したことがない窮地に立たされた。

「コーチェラのステージは2週続けてあって、1回目を迎えるまでは…無理すぎて吐いたりしていました」

「様子がおかしいのを察してか、ダンサーさんが本番前日の夜に連絡をくれて。『きゃりーちゃんはいつも通りやってください。私たちが一緒だから1人じゃないんで』っていう言葉で頑張れましたね」

「Coachella Valley Music and Arts Festival 2022」Photo by Kirby Gladstein

出番が近づき、ステージに向かう途中も不安でいっぱいだったが、1回目の公演は大勢の観客を動員し大盛り上がり。ステージから降りた瞬間、安堵の涙があふれた。

1回目で調子をつかみ、満を持しての2回目公演。直前にダンサーが体調不良となり、1人でパフォーマンスをせざるを得ないという危機的状況に陥った。

「これまでずっとダンサーさんと一緒だったし、1人でステージに立つなんて絶対無理だと思いました」

「でも、誰が悪いって話でもないのに、ダンサーさんたちは"合わせる顔もないです…"って感じで、信じられないくらい謝ってて…。そんな彼女たちをちょっとでも励ませたらいいなって思いもあって、ステージに立ちました」

体制の変更を受け、セットリストも急きょ調整。

当初予定されていた楽曲「ガムガムガール」は、ダンサー不在ではどうしても成立しない振りだったため、直前で「きらきらキラー」に差し替えられた。

「きらきらキラー」ジャケット(提供:ワーナーミュージック・ジャパン)

「『きらきらキラー』は、フェスで盛り上がる、元気が出る曲ってイメージだったんですけど、今聞くとコーチェラの思い出がフラッシュバックしますね。自分の中で思い入れのある曲になりました」

マイクを持つ左手の甲には、お守りとして出られなかったダンサーの名前を描いた。

前代未聞、たった1人で臨んだステージは、会場の観客や配信で視聴しているファン、そして待機しながら見守るダンサーやスタッフたちに感動を与えた。

「今までは、自分は無能だなってずっと思っていました。でも今の自分だったら、不可能だって思ってたことも全然いけるんだ、意外とひとりでも世界に挑戦できたのか、って気づかされたんです」

「苦手なもの、行きたくない場所、みなさんもあるかもしれないけどやってみたら意外と大丈夫かもしれない」

「そうやって、みんなのはじめの一歩に寄り添えるライブができたらいいなーなんて。それってどんなライブだろうって感じですけど(笑)」

コーチェラでの試練を乗り越え、ダンサーやスタッフとの結束がより強くなったと同時に、自身はチームの「代表」であるという感覚もまた強くなった。

「自分には特別な力がある、自分じゃないとステージに上がれない、なんて本当に思っていないんです」

「"きゃりーぱみゅぱみゅ"はチームで、自分はみんなの夢を背負ってステージに上がってるっていう気持ちです」

"きゃりーぱみゅぱみゅ"と

"ありのままの自分"

「自分がチームを引っ張れるようになりたい」

責任感が増し、チームとより密接に、これまで以上に自分自身をさらけ出して関わるようになった。

その分、"きゃりーぱみゅぱみゅ"と"ありのままの自分"とが一体化し始め、悩むことも増えたという。

「仕事とプライベートが近づきすぎちゃって、仕事でショックなことがあると『ありのままの自分自身がダメなんだ…』って思うようになっちゃったんですよね」

「切り替えるスイッチがないと、この業界は疲れちゃう気がします」

「以前、部屋をピンクのバービー人形だらけにしていたら、家に帰ってきてからも"きゃりーぱみゅぱみゅ"でいなきゃいけない気がして息苦しかったんです」

「それで今は緑に囲まれた無印良品のような家にしてるんですけど(笑)。やっぱり仕事と好きなことが完全に一緒になって、スイッチを切るところがなくなるとダメだなって」

7月に10周年の全国ツアーを完走し、10月には6年ぶりの武道館ライブも控える。同時に、ラジオや執筆、テレビ出演などのレギュラー仕事をこなすという忙しい日々を過ごしている。

「最近忙しすぎて、ちょっと"芸能人病"になりそうなんですよね。頭で考える前に口が動いて、すごくうまく話せちゃうんだけど目の奥が真っ黒、みたいな」

「忙しすぎると何のために働いてるか分からなくなるし、忙しすぎて心を亡くさないようにはしたいです」

瞳に光を宿したまま、きゃりーぱみゅぱみゅと自分とのバランスをうまく保っていきたいと微笑む。

今後の展望を聞くと、きゃりーらしいまっすぐな言葉が返ってきた。

「もっと海外に進出していきたいなって思いますね。久しぶりにアメリカでライブをしたらすごく盛り上がったのがうれしくて。言葉の壁を越えて、音楽ってこんなに会場を一つにできるんだって実感できたから」

「国内では…なめられないように活動していきたいです(笑)」

「フェスで私が出番のタイミングで『ご飯食べま〜す』ってSNSに投稿されてたり、『はいはい、カワイイのあれでしょ』って思われてるので。そういうのとは闘っていきたいですね」

Staff Credit

Text : 荒川のぞみ(LINE)

Photo : 青山裕企

Movie : 水島英樹

Edit : 前田将博(LINE)


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Written by

LINE NEWS編集部