あなたに足りないのは「自信」だけかもしれない。マンガ『無能の鷹』で鷹野が教えてくれること

※読んでも仕事のスキルは身につきません

「能ある鷹は爪を隠す」という、誰もが知ることわざがある。辞書(『大辞林』/小学館)によると「実力のある者ほど、それを表面に現さないということのたとえ」とある。

たしかに、謙虚さの中に確固たる自信が見える人は仕事ができそうな印象がある。仕事ができる人ほど、それをひけらかさないように見える。では、振る舞いだけでも仕事ができそうな印象を与えられたら……?

「有能そうなのに無能」な社員が価値観揺るがすマンガ『無能の鷹』

鷹野ツメ子は、無能だ。

難しいことは考えられないし、仕事に必要な知識がまったくない。それどころか漢字が読めないし、算数もできない。なんならコピーすらまともに取れない。出社してもやることがないので、主にYouTubeを観て過ごしている。

『無能の鷹』の舞台はITコンサル企業。まったく仕事ができないにもかかわらず、いかにも"デキる人"なビジュアルとあまりにも自信に満ち溢れている態度のおかげで採用面接を突破してしまった鷹野が、優秀な同僚や難しいクライアントの価値観を揺るがしていくギャグマンガだ。

『無能の鷹』1巻表紙 ©︎はんざき朝未/講談社

気弱な同期、現状に悩む先輩、価値観に捉われた同僚、不満を持つクライアント――作中には、仕事に対して様々な悩みを抱える人たちが出てくる。

一方、鷹野はあまりにも何も悩んでいない。

同僚から無能扱いされようが、クライアントが怪訝な顔をしていようが、堂々としている。ただ堂々としているだけなのだ。しかしその自信に満ち溢れた姿が、人々の悩みを解決していく。

『無能の鷹』1巻より ©︎はんざき朝未/講談社

「仕事は自信だけじゃどうにもならない」と思うかもしれないが、はたして本当にそうだろうか?

もちろん知識や技術は重要だが、それらを持っている自分を信じて能力を発揮できなければ、ある種「無能」なのではないだろうか。自信がないから、自分がやるべきこともわからなくなるのではないか。鷹野を見ていると、不本意だがそういう気持ちになってくる。

大事なのは自分へのハッタリ

作中では、鷹野と同期の鶸田(ひわだ)がコンビを組んで営業に行くことが多い。

鶸田は分析スキルが高く提案内容も良く、社内では有能と評価されるが、気弱すぎるゆえ肝心の提案がまったくうまくいかない。

優秀だが自身のない鶸田(上コマ右)と無能だが堂々としている鷹野がコンビを組む

『無能の鷹』1巻より©︎はんざき朝未/講談社

そんな鶸田は、いつも鷹野に助けられる。

鷹野が言っていることはいつもトンチンカンなのに、クライアントは鷹野の自信に満ち溢れた言葉や態度をすべて都合良く捉えて納得してしまうのだ。鶸田が理解できないままになぜかうまく話がまとまっていく。

「割り箸のきれいな割り方」も鷹野が口にすればクライアントたちの深読みの対象に

『無能の鷹』2巻より ©︎はんざき朝未/講談社

読者は「所詮ギャグマンガだからめちゃくちゃなんだな」と思うだろうが、そこには意外と仕事の本質が映し出されている。

思い描く姿になれず思い悩む前に、いっそ自分が思い描く理想の姿を演じて、ハッタリをかましてしまえばいい、と

ハッタリを重ねていくうちに、いつの間にか思い描く姿に追いつけるのではないだろうか。

まずは「自分にハッタリをかけること」が大切 『無能の鷹』3巻より ©︎はんざき朝未/講談社

仕事で一番大事なのは自信を持って振る舞うこと

誰が何を話そうが、都合良く捉えて勝手にわかった気になる人は多い。SNSやYahoo!ニュースのコメント欄などを見ているとよく思う。

しかし、振り返ってみると現実世界の仕事わりとそんなものではないか。

どれだけ知識と情報を詰め込んだ資料を用意して、綿密な計画を立てて提案しても、自信を持って話す人の前では流れを持っていかれることも多い。

提案だけじゃない。堂々と言われるからうなずいていると、気づけば自分の仕事が増えていた……なんてこともありがちだ。

自分に自信があろうがなかろうが、自信があるように振る舞って他者を納得させる。それこそが仕事の交渉における、一番大事な能力なのかもしれない。

鷹野とその周りの人々を見ているとそう思う(不本意だが)。

ちなみに『無能の鷹』を読んでいても、仕事のスキルはまったく身につかない。別にモチベーションも上がらない。

でも、肩の力を抜いて、今の自分にもっと自信を持って仕事に向き合ってもいいのかもしれない。なんとなくそう思えるのだ。


Written by

鈴木梢