閲覧注意の話題作『食糧人類』、グロテスクの中に隠された人間の愛おしさ

一度読み始めたら、ページをめくる手を止められない…

はじめまして!渋谷飛鳥と申します。

普段はテレビや舞台で女優として活動しています。『渡る世間は鬼ばかり』でえなりくんの恋人役を演じたかと思えば、TBS系列で放送されている​『プレバト!!』で水彩画を描いてみたり、バラエティで100均グッズについて熱く語ったり。趣味が仕事に影響しすぎているタイプの女優です。

この度、私の大好きなエンタメ作品をご紹介する機会をいただきました。 嬉しい。ひっくり返る程に嬉しい。

何を紹介すべきなのか全く絞れず、気付けばギリギリまで作品の選定に勤しみました。 (つまり楽しくマンガを読んでいたということです)

もしも人類が何かの「食糧」だったとしたら…?

今回ご紹介するのはマンガ『食糧人類-Starving Anonymous-』。SNS等のネット広告で見かけたことがある方もいるのではないでしょうか?私もその一人です。

『食糧人類-Starving Anonymous-』1巻表紙 ©️イナベカズ・蔵石ユウ・水谷健吾/講談社

あらすじをざっと説明すると 、主人公はごくごく普通の高校生・伊江。学校帰りに友人カズと帰宅の為にバスに乗ったところ車内に催眠ガスを撒かれ、拉致されてしまいます。目が覚めると謎の施設「ゆりかご」に運び込まれていて…なんとそこには冷凍された裸の人間が並び、人間の手によって解体処理されているのでした

そう、タイトル通りこれは「人類が食糧になる」物語。

豚や牛、鳥や羊などを食べるために飼育することは、現代では当たり前に見る光景です。しかし、家畜と称される生き物達はいったいどんな気持ちで出荷を待っているのでしょうか…。

冷蔵庫に眠っているパックの豚肉から目を逸らしたくなるので、そんなことは考えません。だって消費期限は明日だし。

伊江が拉致された施設で出会った2人の青年、ナツネと山引。

2話の冒頭で、2人はこんなセリフを言い放ちます。

「恐らくここは人間の飼育室」

「または人間の肥育場というべきか」​

『食糧人類-Starving Anonymous-』1巻より ©️イナベカズ・蔵石ユウ・水谷健吾/講談社

背景には謎のチューブを貪り吸う人間たち。高級食材フォアグラの飼育方法を聞いた時と同じような眩暈を感じました​。何が恐ろしいって、その飼育係もまた、人間。「誰か」が「何か」の目的で、人間を飼育・養殖し、冷凍加工したり生のまま美味しく食べられるように取り計らったりしているのです

高級なお寿司屋さんで 「さっき生簀からあげたばかりの新鮮なお刺身ですよ」って言われたらワクワクしちゃいますよね。でも、まな板の上の切り身を自分に置き換えて考えたことって、ありますか?

美しすぎて閲覧注意!それでも引き込まれてしまう魅力

作画が美しく、細部まで見事に描きこまれているこの作品。この先に待ち受ける吐きそうなほどにグロテスクな展開の描写さえ、繊細に、リアルに描かれているに違いない…と、1話を読んだ段階で容易に想像できたはずなのに。

『食糧人類-Starving Anonymous-』1巻より ©️イナベカズ・蔵石ユウ・水谷健吾/講談社

あぁしまった…これは閲覧注意の作品だ。血がブシャーなんてレベルじゃなく、切断面、臓器、皮剥ぎのオンパレード。

「読み進めたら、まずい…」と頭では分かっているのに、どうしよう、先が気になって仕方がない。読みたいという欲望の前に、私たちは無力ですページをめくる手を止めることは出来ませんでした。(苦手な人は本当にご注意くださいね)

愛おしさや愚かさも…描かれるぐちゃぐちゃの人間味

ナツネの過去の話が好きです。過去の回想でナツネの母が登場するのですが、母がどんな姿になろうと、ナツネにどんな真実があろうと、そこには親子の愛情があり、幸せな瞬間が確かに存在していました。

『食糧人類-Starving Anonymous-』2巻より ©️イナベカズ・蔵石ユウ・水谷健吾/講談社

倫理観が崩壊しているナツネと山引ではありますが、常識も何もない地獄の様な空間からの脱出作戦において、2人の頼もしさは計り知れません。時折見せるコミカルなやり取りにホッとします。

食べる側・育てる側・食べられる側… 。それぞれの思惑や謎がスリリングにテンポよく解明され、ハイスピードで伏線が回収されていきます。その世界に一瞬垣間見える、人間という生物の愚かさや弱さ。その「どうしようもない」瞬間にふと人間の愛おしさを感じてしまうのです。

1秒先の生死が分からない状況で、常にギリギリの選択を迫られる登場人物たち。葛藤や苦悩、恐怖と戦い続ける中で、衝動的に溢れ出る自己や他者への愛情は、なんとも儚く美しいものでした。たとえそれが自らを危険に晒す結果になるとしても、走り出さずにはいられない。グロテスクの中に隠されたこのぐちゃぐちゃの人間味こそが、この作品の大きな魅力ではないでしょうか​。

フィクションの非日常に「起こりえないとも言い切れない明日」のリアリティがある作品は最高の体験ができます。

おうち時間に刺激が欲しい方は、続編『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』や前作『アポカリプスの砦』もぜひ。読みだしたら止まらないので、お時間のある時に。