簡単に伝わらないから伝わるもの。映画『コーダ あいのうた』には愛が溢れている!

本年度アカデミー作品賞受賞の感動作

あなたに聞きたいことがあります。

家族と仲は良いですか?

夢や目標はありましたか?

では、その夢を両親から反対されたことは?

色々聞いてしまってすみません。

最後に、あなたの家族は耳が聞こえますか?

今回私が紹介したいのは映画『コーダ あいのうた』。

日本では今年の1月に上映され、アカデミー賞(作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門) も受賞した注目作品です。

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

Blu-ray コレクターズ・エディション:5,280 円 (税込) Blu-ray::5,280 円(税込) DVD: 4,180円 (税込)

発売日:2022年9月2日

発売・販売元:ギャガ

タイトルの「コーダ」に込められた意味とは

coda(コーダ)にはふたつの意味があります。ひとつは、「Children of Deaf Adults」(「耳の聞こえない親を持つ子供たち」)という意味。この作品の主人公ルビーの両親はろう者で、兄も同じく耳が聞こえません。たったひとり、自分だけが唯一の聴者です。

そしてもうひとつの意味は、音楽用語として楽曲や楽章の締めを表す「新たな章の始まり」。

このふたつの意味のタイトルを持つ作品はどんなものなのか、内田流にお伝えしていきます!

あ、ここからは注意してください。多少のネタバレありです。

漫画のネタバレよりも映画のネタバレのほうが許せない! という人が多いので、そういう方はここで引き返してくださいね!(笑)。

ルビーは歌と出会って少しずつ変わっていく

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ろう者の家庭に生まれた主人公が、歌と出会う

とある田舎の海の町で暮らすルビーは、両親と兄の四人家族で、先にも書きましたが彼女ひとりだけが聴者。家族はとにかく陽気で、特に両親のふたりはいろんな意味で元気です(笑)。

彼女は毎日家業である漁業の手伝いをしてから学校へ。幼い頃から通訳としても家族の助けになっていました。偉すぎる。愛ですね。

高校生のルビーは新学期に合唱クラブに入部します。

もともと歌うことが好きな彼女ですが、一番の理由は気になる人が合唱クラブに入部したから!

この当たりは年頃の女の子~って感じですよね。私も学生時代は好きな人と同じ委員会に入りたい! とか思ってたなぁ(笑)。共通点が欲しいんですよね! 恋する乙女、頑張れ!

癖の強い先生との出会いが彼女を変える

最初は人前で歌うことが恥ずかしいと言っていたルビー。学校に入学した頃、意地悪な子からしゃべり方がおかしいと言われたことで自信をなくしていました。

しかし、かなりクセの強い顧問のV先生が彼女の才能を見出し、どんどんルビー自身も変わっていくのです。

私はこのV先生が大好きなので、ちょっとだけ語らせてください。

まずファッションがおしゃれ! 音楽が大好きで、そして熱意があり言葉がまっすぐ! まさにアメとムチという感じで、厳しいこともたっぷり言うんですけど、褒めるところは褒めるし愛もたっぷりな男性。才能がある生徒を放っておけないこともすごく伝わるし、本当に良い味出してます!(笑)。

そんなV先生は、ルビーに都会の名門音楽大学の受験を強く薦めます。この大学は先生自身が卒業した母校でもあることが後に分かりますが、そこにも愛を感じました。

先生と出会って、歌うことにさらに夢中になった彼女は、「音楽の道へ進みたい」と夢を抱くように。素晴らしいですよね! 才能があって、しかもそれを伸ばしてくれる先生に出会えて、やりたいと思うことが見つかるなんて。

その頃学校では合唱コンサートの開催があり、ルビーはなんと気になるあの人、マイルズとデュエットすることに! ふたりでする練習も、なにからなにまでドッキドキ!! なのですが……いろんなことが起こるので、ここは作品を見てくださいね(笑)。

両親の通訳はルビーの役目

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

両親の反対、そのとき兄が……

ある日ルビーは家族に音楽を勉強したいと打ち明けます。

ルビーの歌声がそもそも聴こえない両親は、彼女の才能を信じられません。家業もうまくいっていなくて困っているのに、通訳としても頼りにしているルビーがいなくなることに反対します。

ルビーはきっと「うちは道具とちゃう! 都合よく使わんといて! うちの人生なんやから好きに生きさせてぇや!」と心の中で叫びまくってたはずです。家族から信じてもらえず反対されるのは何よりしんどかっただろうなと思います。

そんな中、兄のレオだけはルビーの決断に賛成でした。諦めて家に残ると言ったルビーに「家族のために犠牲になるのはおかしい!」と怒ります。一晩家に帰らず外で過ごしたくらい怒ってました。ちょっと可愛い(笑)。

長男で誰よりも家を支えたいという意志があるのに、両親がなにかと頼るのは耳が聞こえるルビー。それにもイライラしてたみたいです。言葉には刺がありましたが、誰よりもルビーの夢を応援していて諦めて欲しくなかったんですね。お兄ちゃんですから。

しかも、レオはルビーの友達と付き合っていて、ルビーの歌唱力については話を聞いていたし、余計に行くべきと思ったんでしょう。愛だわ。

合唱コンサートの一幕

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

合唱コンサートのシーンの、はっとする演出

さて、合唱コンサートの日が近付いてきました。母のジャッキーはルビーに当日着る赤いドレスをプレゼントします。その時ルビーは母に「自分もろう者だったらよかった?」と尋ねます。ジャッキーは「あなたが産まれてきたとき、ろうの子であることを祈った」と言うんです。分かり合えないかもしれない、という心配があってのことでした。正直な母親ジャッキーと素直なルビー、ふたりならではの言葉で愛を伝え合います。親子の絆を感じる温かいシーンです。

さぁ、そしていよいよ合唱コンサートの日。

家族全員(レオの彼女も一緒)で会場に駆けつけます。

耳が聞こえない彼らにも盛り上がっている雰囲気が伝わり、皆楽しんで過ごします。そしていよいよルビーとマイルズのデュエットステージが始まります。

父フランクは、ふと会場内を見渡します。人々がふたりの歌声に聞き入り、涙ぐんでいる人までいるのを見つけます。ここのシーンは、耳が聞こえない人の世界観を表現するため無音になっていて、正直に言うと私は、落ち着かなく、不安になってしまいました。音がなくて逆に落ち着くと思いきや、です。この数十秒間は彼らと同じ世界で、同じ目線で映画を「見る」だけになります。あなたはどう感じるでしょうか。

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ネタバレしても楽しめる、名シーン・名演技

歌が終わるとスタンディングオベーション。ルビーの才能が本物だと気付いたこの時のフランクの表情……見てくださいね!

その夜フランクは、ルビーに自分のために歌ってほしいとお願いします。

ルビーの首に手を当てて、しっかり振動を確かめながら娘の歌声を聴く。このシーンが本当に素敵で大好きです。思わず涙が出ました。

さて、この後どうなるでしょうか? この先はお伝えしません!

あまりにもネタバレしすぎました(笑)。

今さらすぎます?(笑)。大丈夫です、きっとこれを読んだあともしっかり楽しめます! なんと言っても俳優さんたちがめちゃくちゃ素晴らしいのです。

ルビーを抱きしめるロッシ一家

『コーダ あいのうた』© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

父、母、兄役の俳優は実際にろう者の俳優を起用しているんだそうです。これはシアン・ヘダー監督の考えによるもので、監督自身も手話を習得されたそうです。現場ではスタッフも俳優も皆が手話で会話をしていたそうですよ。

そして、アカデミー賞受賞。作品賞のほか、俳優さんたちもそれぞれ受賞していて、父役のトロイ・コッツァーは聴覚に障がいのある俳優としては、初めての助演男優賞受賞となりました。

最初から最後まで光のある、いろんな部分で愛が溢れている作品です。きっとあなたも好きにならずにはいられないと思います。

ぜひご覧になってみてください。


Written by

内田瑞穂