漫画『女の園の星』に潜む笑いの罠に、あなたは耐えられますか?

女子高のリアルな日常を描いたコメディ

こんにちは。

隙あらば何かしらのマンガアプリを開いている、漫画好き女優・渋谷飛鳥です。便利な時代に生まれて幸せです。

前回に引き続き、おすすめ作品をご紹介させていただきます!やったー!

先日、静岡に行ってきました。

知らない人に配りたくなるほど大好きな『女の園の星』

今回ご紹介するのは和山やま先生による『女の園の星』。​この作品は、「このマンガがすごい!2021」オンナ編1位や、「マンガ大賞2022」4位など、超人気作です。人気すぎて、私のような者が今さらおすすめするのは憚られるのですが、ちょっとだけ画面を閉じずに聞いていただきたい。

このマンガを読んでしまったら最後、誰かに勧めずにはいられない。黙っていられない。私に莫大な財力があったら、街角ですれ違う人に今販売されている全2巻をセットで配って回りたい。そのくらい大好きな作品です。

©和山やま/祥伝社フィールコミックス

「女の園のくだらないお話」というプロローグ

『女の園の星』は、とある女子高校に勤務する国語教師・星先生と、同僚の先生や生徒たちの日常を描いたコメディマンガです。タイトルの「星」はつまり、星先生のこと。

先生と生徒の恋愛や、いじめ問題など、学園ものによくあるドラマチックな展開は一切出てきません。プロローグには、「これは女の園のくだらないお話」の文字。先生と生徒たちが淡々と「日常」を過ごす様子が描かれていきます。

さて、ここでひとつ問題が発生しました。 この(いい意味で)くだらなくて最高の面白さを伝えようとすると、途端にキーボードを打つ手が止まります。えっ、ギャグやコメディの説明ってどうやるの?

「まじおもろい」「やばい」「じわる」以外何も浮かばず、一向に働く気配のない語彙力は、死んだ目をしてこちらを見つめているのです。

ただ、どうしても伝えたい気持ちはあるのでその熱量だけで突っ走ろうと思います。 それは、遺言のように残した妹へのLINE。

「絶対に電車で読んじゃダメ」

耐えきれず電車の中で爆笑

©和山やま/祥伝社フィールコミックス

第2話では授業中、生徒が窓を開けながら「先生、犬が…」と呟きます。星先生も私たち読者も 「校庭に犬が入ってきたのかな?」と思いますよね。その気持ちでページをめくったらだめです。 危険です。あーーー!

突然、現れる犬の正体は? ©和山やま/祥伝社フィールコミックス

次のページでは、衝撃的な姿の犬。な、なんで…?

ここでもう耐えきれませんでした。1話でなんとかこらえた分も積み重なって、電車で盛大に吹き出しました。何ごともなかったかのように次の駅で降車して、車両を変えてまた乗りました。マスクが今世紀最大の活躍を見せてくれました。

いろいろあって、その犬を預かることになった星先生のクラス(しかも勝手に名前をセツコからタピオカに変更) 。その後、事件が起こります。

「帰りのホームルームを始める前にみなさん…全員目をつむってください」

次々と災難がふりかかるセツコ(タピオカ) ©和山やま/祥伝社フィールコミックス

このシーンのセツコ…いやタピオカの顔を見た瞬間に本日2度目の吹き出し。周囲の視線が突き刺さる。もう勘弁して欲しい。

まだ読めていない妹に、瀕死状態の姉は最後の力をふり絞って先ほどのLINEを送信しました。

「絶対に電車で読んじゃダメ」

天才的な言葉選びと随所に仕掛けられたコメディの罠

心の声を含むセリフがとにかく秀逸。派手にツッコむのではなく、真顔で感想を述べているだけなのに、ついニヤリとしてしまいます。

星先生のツッコミはほぼ拾われることなく、会話は続く ©和山やま/祥伝社フィールコミックス

この、「敬いすぎ」という、たった一言が悔しいほどにじわじわくる。女子高生が言いそう。言葉のチョイスが天才。

女子高生がいかにも言いそうなセリフが随所に ©和山やま/祥伝社フィールコミックス

平穏な毎日を過ごしていても、心の中で思わず「えっなんで?」と突っ込みたくなることってありますよね?

さっき家の近所を歩いていたら、いつも焼き鳥を焼いているおじさんが、歩道の真ん中に座ってぼんやり空を見つめていました。具合が悪い様子ではないので、おそらく、突然座りたくなったのでしょう。長く生きていると何年かに一度そういう日があるのかもしれません。

しかしこちらとしても「えっなんで?」という感想を持たざるを得ません。

普通が一番面白い!疲れている人にぜひ読んでほしい

この漫画にはそんな「普通」を詰み重ねていく中で出てくる唐突な違和感が、巧妙な罠のように随所に仕掛けられています。作者の和山やま先生の仕掛けた罠にしっかりと引っかかった挙句、二度目も全く同じ場所で大笑いしてしまうのです。

明日には忘れてしまうであろう友人との他愛のない会話。何で爆笑したのか覚えていないけど、 腹筋が痛くなるほど笑い転げた日。毎日起こる小さな事件。私たちの日常には可笑しさがあふれています。

それを丁寧に汲み取り、適度な距離感で見つめながら淡々と積み上げていくのがこの『女の園の星』。

だからこそ「とにかく読んで、読めばわかるさ」と配り歩きたいのですが、そうもいかないのでまずは帰りに本屋さんに寄ってみてください。疲れた心にスッとしみこみ、気が付けば電車で笑ってしまっているはずです。