殺人鬼のお兄ちゃんにまさかの憧れ…歪な兄弟の絆を描くホラー映画『ファウンド』

普通の“ヒーロー”に飽きた人にオススメ

ホラー映画が大好き、篠崎こころです。

​今回もグロ要素多めのおすすめ作品を紹介します。

みなさんは観たい映画を探すときに、何を参考にしていますか?私は自分と趣味が近い、ホラーやミステリーを​中心に解説する映画系YouTuberさんのレビューをよく参考にしています。

今回私が紹介する『ファウンド』も、そこでおすすめされていて知った作品。殺人鬼が出てくるスプラッターなんですけど、「グロいだけじゃなく、兄弟の絆も描かれている美しい映画」と解説されていたんです。

「そんな作品あるの?」と興味をひかれ、いざ観てみたら、冒頭から驚きの連続でした。

© Forbidden Films, LLC All Rights Reserved.

ぼくのお兄ちゃんは、殺人鬼だった

まず、主人公のマーティ少年(11歳)が、お兄ちゃん(大学生くらい)の部屋のクローゼットに、本物の「生首」が入っているの​を見つけるところから映画は始まります。

一般的なホラー映画だったら、「お兄ちゃんが殺人鬼かもしれない」と思わせる手がかりを先に見せて、そこから徐々に真相に近づいていくサスペンスがドキドキできる見どころになるのだと思います。ほかに疑わしい容疑者が出てきたりして、観客のミスリードを誘ったり。

でも、『ファウンド』はまったく違います。「ぼくのお兄ちゃんは殺人鬼だ」と最初から主人公が知っている前提で物語が進んでいくんです。

しかも、その生首は、数日おきに新しいものになっていきます−−。

お兄ちゃんの部屋でガスマスクを見つめるマーティ© Forbidden Films, LLC All Rights Reserved.

ホラー映画が好きで、自分でも似たような作風のマンガを描いているマーティは、学校では根暗な子としていじめの対象になっています。

そんな鬱屈した感情を抱えた彼は、「生首」を見つけたことで、お兄ちゃんが「自分が好きなホラー映画のキャラクター」のように思えてきます。殺人という出来事が非現実的すぎて、子どもがヒーロー映画のヒーローに抱くような漠然としたあこがれを、お兄ちゃんに感じるようになってしまうのです。

しかも、お兄ちゃんは、弟が自分の「秘密」に気がついていると感づいて、弟をいじめた相手を成敗することで、そのあこがれの気持ちに応えようとするようになります。

この普通じゃない兄弟の関係は、果たしてどこに行き着くのか。それが『ファウンド』という映画のテーマです。歪なかたちではあるんですけど、たしかに「兄弟の絆」がそこでは描かれています。

そういう作品だから、ホラー映画にありがちな、「わっ」とおどかすシーンはほとんどありません。残酷な場面はしっかり出てくるんですけど、それも観客に恐怖を与えようとしている感じではないんです。「この人はどうしてこうなってしまったのだろう?」と考えさせるような描き方になっています。

私にとっては間違いなく、これまで観たことがなかったタイプのホラー映画でした。

“普通の”ヒーロー映画はまぶしすぎる人に

ホラー映画が好きだって言うと、「よく平気だね」とか「どうしてわざわざ怖いものを観るの?」と聞かれることがあります。

私はホラー映画を観ると、スカッとした気持ちになるんです。

誰しも生きていたら憂鬱になることがあると思うんです。仕事も楽しいことばかりじゃなくて、我慢しなきゃいけないことがある。極端なことを言えば、「あいつさえいなければ……」くらいのストレスを抱えている人だっているでしょう。そういう感情をホラー映画は発散してくれるような気がしています。

絶対に自分の人生で起こり得ないことを描いてくれるからこそ爽快感がある。銃を撃ちまくるアクション映画が好きな人と気持ちは一緒かもしれません

「それならホラーじゃなくて、『アベンジャーズ』みたいなヒーロー映画を観たらいいじゃないか」と思う方もいるでしょう。

、私にはヒーロー映画はまぶしすぎました。暗いもの、怖いものこそ私の深い部分に近づき寄り添ってくれるんです。

この映画の主人公マーティも、きっと私と同じタイプなのではないかと思います。

マーティにとって、いじめっ子を成敗してくれるお兄ちゃんは、臆病な自分ができないことをしてくれる存在であり、まさに一種の“ヒーロー”なんです。だから、両親にも警察にもお兄ちゃんの「秘密」を言わず、自分の胸にしまっています。

お兄ちゃんは恐ろしい存在で“ヒーロー”でもあるんです © Forbidden Films, LLC All Rights Reserved.

低予算なので、作中にはところどころチープ場面もあるんですけど、そんな印象がすべて吹き飛ぶくらい、最後のシーンには本当に衝撃を受けます。

ホラー映画なのに、「家族とか兄弟って、いったい何なんだろう……」と考え込んでしまい、忘れられない作品になりました。

万人向けの作品ではないかもしれません。でも、普通の“ヒーロー”が眩しすぎる方にこそ、ぜひ観てほしいと思います。