ダサいけど愛おしい 『ナポレオン・ダイナマイト』がとにかく最高

エレコミ・やついが影響を受けたクセ強青春ムービー

『ナポレオン・ダイナマイト』は、日本では劇場公開されていないアメリカのインディーズ映画。アメリカでスマッシュヒットし、いくつかの作品賞を受賞したり、映画祭にも出品されたりしたそうです。

この映画は、当初は『バス男』という邦題で店頭に並んでいました。そんな扱いだったので、誤解している人もいるでしょうが、とにかく最高の映画で大好きです。

ネタを作る時なんかによく映画を観るんですけど、この作品を観て、あまりの良さに一本コントを作りました。「自分の住む街ではない遠くの本屋さんまで、ある本(エロ本じゃないよ)を買いに行った中学生が帰り道にバッタリ嫌な同級生に会ってしまっていろいろ追及される」って内容。

実際はそういう設定の映画じゃないんだけど、雰囲気やキャラクター造形の面で影響を受けました。当時コントを観て、ひとりだけそのことに気が付いてアンケートに書いてくれた人がいたことを思い出します。

イケてない奴らのオフビートな青春物語

物語は、超がつくほどの田舎に住んでいる全く冴えない主人公のナポレオン・ダイナマイトくんが、冴えない友だちと繰り広げた「ある夏の出来事」って感じで、伏線回収とか大どんでん返しとかあっと驚くアクションシーンやラブシーンは全く出てきません。

でも観ていて飽きないし、笑ってしまう。というかずっと観続けたくなる青春映画になっています。終わって欲しくない感じ。基本的にリアクションがないオフビートで物語が進んでいきます。

最初はナポレオン・ダイナマイトくんのイケてない日常がこれでもかと描かれます。

引きこもりの兄貴と、活動的なおばあちゃんと3人暮らしの彼は、車もないから小学生しか乗っていないスクールバスを使って高校に通っています。

学校に着くとイケてる奴らから意味もなくロッカーに押しつけられたり、ヘッドロックされたりする。

ただ、ナポレオン・ダイナマイトくんは堂々としていて少しも陰湿な感じがなく、誰とでも対等な立場って雰囲気があるから笑えるんですよね。

歌に合わせて手話をしながら踊るクラブになぜか入っていて、そのダンス発表会を教室で行うシーンが唐突に挿入されるんだけど、そのシーンは何度観ても笑ってしまいます。

クラスメイトも失笑しながら黙って観ているけど、発表している本人はいたって真面目なところが面白いんだよね。

『ナポレオン・ダイナマイト』 デジタル配信中(購入/レンタル) © 2022 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

服もキャラも冴えないんだけどグッとくる

そして劇中で着ているTシャツがどれも独特でダサいはずなのに、なぜかオシャレなのがグッときます。

「どこに売ってるんだよ?」ってデザインで、見ていると欲しくなってきます。というか、この映画のキャラクターたちが着ている服は、全部なんか絶妙なダサさで良いんだよな。なんとも言えないリアリティーがあります。

主な登場人物はみんな、イケてるグループには属さない「変わり者」。学校でどうしても浮いてしまう人って感じで、英語が苦手なメキシコ人のペドロや、自作グッズの訪問販売や写真館を開いて学費を稼いでいるデビーという女の子と仲良くなっていきます。この3人のバランスが本当にとても良いんです。

淡い恋心もあるんだけど、誰も言葉にせず、友だちとして一緒に助け合っている。どの子も決して上手くいっている訳でもないのに、みんなそれぞれやる気があって腐ってないんです。

「どうせ僕なんて」とネガティブなことを言いそうなキャラクターなのに一番派手な女の子に果敢にアタックしたり、生徒会長に立候補したりと自分の可能性を信じているところも観ていて気持ちが良いところです。

どいつもこいつも愛おしい! 優しさに溢れた最高傑作

そして本作は出てくる人出てくる人、みんな良い顔ばかり。役者なのか、その辺のおじさん連れて来たのかわかんないくらい味のある顔の俳優がこれでもかと出てきます。

ちょっとだけ出てくるキャラクターがどいつもこいつもおかしくて愛おしくなります。見渡す限り何もないアメリカの田舎で繰り広げられる青春に、行ったこともないのに郷愁を感じます。

劇中で流れている曲も最高で、サントラが欲しくなります。最後の最後、ナポレオンダイナマイトくんの1人ダンスシーンもずっと観ていたくなります。決して上手くはないんだけど、心を打つんだよね。

終始、優しさに溢れた青春コメディー映画になっていて余韻が美しい作品。今でも時々見返したりしていて、もし僕が将来BARを経営したら、多分ずっとこの映画を流していると思います。ぜひ観てみてください。