シリアスだけど盛り上がる 移民が主役のミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』

主人公に重ねた選手時代の思い

さっきまでふつうに会話していたはずが、いつの間にか歌になっていて、そこにダンスも加わり、気づいたらびっくりするくらいの大人数で歌い踊っている——。

そんなシーンがたびたびあって、終始ワクワクさせられ、同時に移民のシビアな問題について考えさせられもする。

今回は、そんなミュージカル映画をご紹介します。

『イン・ザ・ハイツ』デジタル配信中

ブルーレイ 2,619円(税込)/DVD 1,572円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『イン・ザ・ハイツ』は、ニューヨークのワシントン・ハイツという、中南米系移民が多く暮らす街を舞台にしたミュージカルです。

移民といっても、この街で生まれた2世、3世やミックスもいれば、ルーツの国もさまざまです。

主人公の4人も、自分の居場所に悩んだり、それぞれの葛藤や問題を抱えたりしています。

ニーナの悩みに、選手時代を思い出して感情移入

4人の中で私の印象に強く残ったのは、プエルトリコ系移民のニーナです。

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ニーナは小さいころからとても優秀で、みんなから期待される存在でした。そして彼女は、この街から初めて、スタンフォード大学へ進学することになります。

周りの人たちから「街の誇り」と讃えられ、拍手で送り出されたニーナでしたが、ワシントン・ハイツから離れることへの罪悪感や、期待を背負わされる重圧を抱えていました。

しかも、大学では差別が待っていました。彼女は、大学を退学したいと思い、ワシントン・ハイツに戻ってきてしまいます。

でも、みんなの期待を知っている彼女は、その事を誰かに相談したり打ち明けたりすることができません。

私自身頭が良いわけでもないし、大学を出てもいませんが、彼女の悩みには共感する部分があります。

私がソフトボール選手になった時も、地元には今までそういった存在がいなかったので、周りの人たちからすごいことだと褒めてもらいました。

@redterriers

すごく嬉しくて、「これから頑張っていくぞ!」と、ニーナが夢を抱えてカリフォルニアに旅立ったのと同じように、私も球団のある愛知県に向かいました。

1年目のシーズンでは、たくさんの賞を受賞し、18歳にして四冠を獲得しました。

もちろん嬉しかったんですが、それと同時に、予想外の結果を出してしまったことで、次節へのプレッシャーや、周囲からの嫉妬なども感じ、その雰囲気や空気、かけられる言葉が、つらくもありました。

そのあまり、2年目の時は、ソフトボールをする意味や意欲を見失いかけていたことがありました。

でも……。

ソフトボールを止めたい。その一言を、誰にも相談できなかった。

周りからしたら、「そこまで上りつめているのになぜ?」と思うかもしれない。けど、私はいま、そんな事よりもすごく重要な事を失いかけてる。

ニーナもきっと、そんな自分自身を守るため、悩んで出した答えが「止めたい」だったんだと思います。

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差別を受けた彼女と私とでは、置かれた立場も環境も違うけれど、似てる部分があるなぁ、と感情移入してしまいます。

そんなふうに、ニーナと当時の自分を重ねて、「こんな時もあったな。それがまた頑張れるキッカケにもなったんだよな」と思い出しながら、この映画を観ました。

前を向いて生きる登場人物たちに、勇気づけられる

主人公の4人は、それぞれが置かれている状況に対して、決してめげずに新しいアクションを起こしていきます。

そして、新しい考えや気持ちを発見していきます。

なので、胸を締め付けられるようなことが起きたときも、この人たちならまた乗り越えられるんだろうなと思えるんです。

見ている私も、4人と一緒に成長していくような、勇気をもらいながら一緒に物語を進んでいるような感じがしてきます。

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自分ではなく環境のせいで、どうにもできないことに直面した人の多くは怒りや、成功している人への恨みを抱えてしまうと思います。

でも、この街の人たちはみんな、苦労してきた分だけ相手思いで、決して裕福ではなくても、誰かを妬むようなふるまいを全く見せません。

何不自由なく生きている私たちからは想像できないような苦労がありながらも、その中で前向きに生きる登場人物たちは、すごくたくましくかっこよく見えました。

移民について知り、考えさせられる

また、彼ら・彼女たちが夢に恋に悩むストーリーを通して、移民が置かれている複雑な環境のことがとても分かりやすく伝わってきます。

生まれた場所や環境によって、住むところや働くところを事実上制限されたり、自分の夢に壁が立ちはだかったり。

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きらびやかで自由なイメージのあるニューヨークにも、こういったことが起こっている場所があるんだな、と勉強になりましたし、私は今、自分がいかに好きなことができる自由な環境にいるのかも思い知りました。 

そして、移民の問題に関してかなりの勉強不足だったことを、とあらためて感じさせられました。

この作品自体はフィクションですが、ワシントン・タウンは実在する街です。

同じ地球に生きている家族として、彼ら・彼女たちの状況が少しでも改善されてほしいと、強く思います。