責任逃れおじさんVS糾弾する目撃者の混沌 『とんでもカオス! ウッドストック1999』

ほんとにカオス。

  • 集められたのはおもに10代〜20代の若者たち。

  • その数25万人。

  • 入り口で飲み物・食べ物はすべて没収。

  • 真夏の日差しにさらされるが日陰はなし。

  • 水やピザの販売はあるが、市価の数倍の値段。

  • トイレは超不衛生。

  • 水よりビールの方が安い。

  • ドラッグの持ち込みには寛容。

ひと昔前の高校野球強豪校か、あるいは何かの収容所かといった文言の列挙ですが、1999年に開催された、由緒正しいロックフェスのお話です。

『とんでもカオス!: ウッドストック1999』は、Netflixオリジナルのコンテンツ。1999年の7月23日から25日にかけて、ニューヨーク州ロームの空軍基地跡地で行われたロックフェス「ウッドストック1999」の記録映像と、当時のスタッフ・観客たちのインタビューで構成されるドキュメンタリーです。これがまあ、おもしろかった。

ラブアンドピースなイベントを目指したはずが、フェスはまさにカオスな状態に。

Netflixシリーズ「とんでもカオス!: ウッドストック1999」独占配信中

「ウッドストック」という名前、音楽好きでなくとも聴いたことのある人は多いのではないでしょうか。1969年8月に初開催されたこの大規模ロックフェスティバルは40万人以上収容の規模、酪農農場にヒッピーが集まるピースフルな雰囲気、そして伝説的な出演者たちと、後に世界中で行われる「フェス」文化の礎となった伝説的なフェスティバルです。

実はこのウッドストック、1969、1979、1989、1994、1999とこれまでに5回行われていまして、Netflixがドキュメンタリーにしたのはその5回目、現状最後のウッドストックとなっている、そして明らかに「汚点」となっている「1999」についてです。

まるで暴動・・・・・・20年前とは思えない惨状が広がるフェス

予告をご覧いただくとわかりますが、2022年現在、日本でイメージする「フェス」とは一線を画す光景が記録されています。

ゴミは処理場のように散乱し、水道が破壊されトイレの汚水が流れ出した場内はピーカンなのに水浸し。ステージは観客が投げ入れたペットボトルだらけ。しまいにはそこら中から火の手が上がり、トラックが燃やされ、横倒しになったATMから現金が盗まれ……と何度も言いますが、これフェスの話、しかも20年かそこら前のですからね。

あちこちから火の手が上がり、暴動さながらの様相となった会場。

Netflixシリーズ「とんでもカオス!: ウッドストック1999」独占配信中

よくよく見てると10代半ばの参加者もいて、彼らが85年生まれぐらいだとすると、筆者と同い年なんです。伝説というよりは、記録・事実と言ったほうが適切なタイムラインです。

責任逃れおじさんVS糾弾する目撃者

作中では悲惨なトラブルが起こった原因を、主催者側が観客達に過度なストレスを与えたせいであると仮説立てし、「金儲けに走り未だに非を認めないおじさんたちVS夢を見てフェス運営に携わったがひどい目に遭った弱者たち」という構図で描いていきます。

「確かに水は高かったかもしれないが無料で飲める場所も用意していた」と言い張るおじさんと、その水が汚水混じりだったせいで病気になった女性。

水飲み場は用意されていたものの、そこから出る水はきれいなものではなかった。

Netflixシリーズ「とんでもカオス!: ウッドストック1999」独占配信中

「一部の音楽好きでもなんでもない騒ぎたいだけのアホ大学生男子が暴れた」と主張するおじさんと、「いやいや、一部って数じゃなかったよ」と抗弁する音楽ジャーナリストたち。

当時の記録と現代でのインタビュー、それぞれの映像をモンタージュした、皮肉の効いた編集も見所の一つです。刺激的な映像も多数含まれていますが、幾度となく、よくこんな素材を見付けたなと思わされます。とんでもない根気。

「ウッドストック1999」イベント主催者の一人、マイケル・ラング。

Netflixシリーズ「とんでもカオス!: ウッドストック1999」独占配信中

反省すべきことはあるけれど、それでもみんな音楽が好き。

主旨から外れるからか作中ではほとんど触れられていませんが、各ミュージシャンのパフォーマンスは本当にすばらしく、それだけでも見応えがあります。特に当時アメリカを席巻していたニューメタルバンド・KORNの演奏シーンで、20万人もの観客が「うねる」さまは圧巻です。蛇が這ってるかのように群衆が動きます。それも、かなり素早く動く蛇が。

KORNのボーカル、マイケル・デイヴィスも当時の様子を振り返る。

Netflixシリーズ「とんでもカオス!: ウッドストック1999」独占配信中

また、そういう人を選んだだけかもしれませんが、ひどい目にあったと語る当事者達が今でも音楽の仕事に就いているようで、イベントの問題点とともに音楽の抗いがたい魅力を確認できる作品でもありました。みんなスタジオみたいなところに居るんですよね。それがいい。

最後の最後に語られる「結果」は本当にあってはならないことで、被害者のことを思うと心底つらい気持ちになりますが、イベントに参加したり、ときに主催したりもするものとして、本当に見てよかったと思わされる作品でした。Netflix 『とんでもカオス!: ウッドストック1999』おすすめです。