差別の荒波を進む、でこぼこバディの絆にほっこり。映画『グリーンブック』

理不尽な差別の時代を描いた感動の物語

子供の頃、仲間外れにされた経験があります。

悲しくて寂しくて、どうして自分がこんな目に合うのかと辛かった。軽く無視される程度のものでしたが、当時の私にとっては大問題でした。

世界には肌の色や目の色が違うというだけで、一部の人々が理不尽な扱いを受けてきた歴史が多くあります。20世紀アメリカの黒人差別もそのひとつ。

社会から"仲間外れ"にされることの痛みは、私の想像を遥かに越えるものだったと思います。

以前鑑賞した、映画『大統領の執事の涙』で衝撃を受けたシーンがありました。

1960年のアメリカで黒人大学生たちが、公民権運動として「黒人が座ることを禁止されている席」にあえて座り、食事をしようと試みます。しかし、学生たちは白人客たちに罵声を浴びせられ、ケチャップや飲み物をかけられ、殴られ、最後には警察に連行されてしまいました。

ただ、自由に席に座って食事をしようとしただけで。それだけ黒人への差別は酷いものでした。

今回ご紹介する『グリーンブック』も、1960年代アメリカの人種差別を描いた作品。2018年のアカデミー賞3部門を受賞した、実話を元にした映画です。

『グリーンブック』 2019年10月2日(水)発売 Blu-ray:¥4,800(税抜) DVD:¥3,800(税抜) 発売・販売元:ギャガ © 2019 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

皆さんは「グリーンブック」って何かご存知ですか?

1936年から1966年まで毎年出版されていた、黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブックのことです。

黒人が公共施設を利用することなどを禁止・制限した「ジム・クロウ法」が存在していた当時、アメリカ南部の多くの州に黒人客を拒否するホテルやレストランがありました。そのため、同胞がトラブルに合わないようにと、黒人のヴィクター・H・グリーンが利用可能な施設をあらかじめガイドブックで案内したのです。

こんなガイドブックが存在していたなんて、私は知りませんでした。

おかしな話ですよね! 公共の場やレストランを利用できないって、どういうこと? って思うんですが、それが当然だった時代もあったんですね……。

粗野な白人ボディーガードと上品な黒人ピアニストの旅

主人公はイタリア系白人男性のトニー・リップです。

ナイトクラブのボディーガードとして働いている彼は、腕っぷしがよく、学はないけど頭の回転が早く、ハッタリ上手。そしてよく食べる! フードファイターばりによく食べる豪快な男性です。(演じた俳優さんは、頑張ってパンパンのお腹に仕上げてたみたいです! すごい!)

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まぁ、なんというかクラスの中心にいそうなタイプで、家族や周りに人たちにも頼られるみたいな人。私も結構好きな人物です。

クラブの改装をきっかけに仕事探しを余儀なくされたトニーのもとに、「期間限定で黒人ピアニストの運転手をしないか?」という話が舞い込んできます。

ピアニストの名前はドクター・シャーリー。カーネギー・ホールの上に住んでいて、ホワイトハウスでの演奏経験もある、著名で裕福な天才ピアニストです。

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初のアメリカ南部ツアーを予定していた彼は、噂に聞いたトニーのトラブル処理の腕を見込んで、運転手兼マネージャーとして働いてほしいと話を持ちかけます。

黒人への偏見を持つトニーですが、家族のために仕事を引き受けることに。

ここからふたりの旅が始まります。

理解しあえるの? と観てるほうが心配になる正反対なふたり

一言で言うとトニーは野蛮、シャーリーは紳士。生まれた環境も価値観も全く違うふたりなので、道中ずっと言い合いしていますが、基本的にトニーが叱られています(笑)。

トニーの思いきりの良さはかっこいいけど、小さいことを気にしなさすぎるのが困りもの。一方、シャーリーは上品でとても律儀だけど、気難しすぎるのも難点かも。ふたりを足して割ったら良い感じになりそうです(笑)。

シャーリーの名前も知らなかったトニーですが、初めて彼の演奏を聴いて驚き、奥さんに手紙で熱く伝えるほど感銘を受けます。演奏を聴いてからは、彼の運転手として働くことに誇りが芽生えてきたように思います。

そんなふたりのやりとりで特に私が好きなのは、トニーが「本場のフライドチキン」をシャーリーに無理やり食べさせるシーンです。

今まで食べたことなかったシャーリーと、食べ方を乱暴に教えるトニー。ふたりの心が通い合う名シーンです(ぜひ映画で確認を!)

シャーリーを襲う理不尽な差別に私も……

トニーはグリーンブックを頼りに進みますが、それでも差別が色濃いアメリカ南部。いろいろなトラブルが起こります。

一流ピアニストのシャーリーでも、ステージ以外ではひとりの黒人として扱われます。白人富裕層の観客たちは失礼な態度をとり、物置のような控え室が用意されていたり、自分が演奏するレストランで食事することも、「決まりですから」と拒否されたりしてしまう。

警察からも理不尽な理由で連行されるのですが、本当に胸糞悪いので詳しくは書きません!(口悪い)

こんな目に遭ってまでなぜアメリカ南部でツアーをするのか。シャーリーの決意の理由を旅の中で知るトニーですが、礼を欠く人たちの態度にはやはり納得できません。

そりゃ、そうだ! 私も正直、観ていて腹が立つことが多かったです。

それでも、どんなに酷い対応をされてもシャーリーは甘んじて受け入れます。彼は品位を保つことでひとり差別と戦っていたのです。それが彼のプライドなんだと思います。

でも「そんなのおかしい!」と苛立つトニー。やがてふたりは激しく言い争いすることになるのですが……。

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多くのトラブルを乗り越えた先に

映画の後半では、ふたりは知らず知らずのうちに「友」になっていき、足りない部分を互いにカバーし合うようなナイスコンビに。

最初は理解できないから怒っていたけど、後半は大事だからこそ怒っているような、そんな感じ。

ふたりには、ツアーの帰路にも、最後までいろいろなドラマが待っています。

実話を元にしたストーリーですが、事実と違う部分もあるようです。しかし、共に過ごしたふたりの絆は本物だと信じたいですね。

お伝えしたい部分はまだめちゃくちゃあるんですが、最後にひとつだけ私の思う感動ポイントを挙げると、「手紙」です。

トニーの妻ドロレスがまた素晴らしい人で……。

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これ以上は止めておきますが、作品を見る時はぜひ、手紙にもご注目を!