天才殺し屋が1年間休業したら? ゆる〜い日常に笑いが込み上げるマンガ『ザ・ファブル』

ギャグとドラマの絶妙なバランスがクセになる!

こんにちは! マンガ好き女優の渋谷飛鳥です。

先日知人に『女の園の星』読んだ?と聞かれました。こみ上げるニヤけを隠し、精一杯の平静を装った真顔で、以前こちらで書いたレビューページを差し出しました。

オタクが推しについて尋ねられた時に出がちなあの顔です。口調はもちろん早口です。デュフ。

殺し屋が一般人になりきる! 「殺さない殺しのプロ」爆誕

今回ご紹介するマンガは『ザ・ファブル』。

同業者からも「ファブル(寓話)」と呼ばれ恐れられている、天才殺し屋のお話。嘘みたいに強い、おとぎ話みたいに伝説的って意味ですね。

バイオレンスな世界を苦手としていた私は、正直食わず嫌い(読まず嫌い)をしていました。でも、あまりにSNSで広告が出てくるからつい…興味本位で試し読みをポチッ。

あれ?スクロールの手が止まらない!?

お試しの1話でガッツリ心を掴まれました。ファブル沼へようこそ。

『ザ・ファブル』1巻表紙 ©️南勝久/講談社

第1話でファブルにボスから課せられた最新ミッションは「一年間休業し、一般人になりきること」。

ファブルはアシスタントの美女と共に、佐藤明(サトウアキラ)、佐藤洋子(サトウヨウコ)という偽名を使い、兄妹の設定で大阪に潜伏します。

ほぼ予備知識なしで読み始めた私は、まずここで衝撃。「あれ、殺さないの!?」と、文字にするとなかなか物騒な疑問を心の中に抱きながらもページを進めます。脳内にいたゴルゴ13にはそっとご退場いただきました。

最強の殺し屋の社会生活ってどんな感じなんだろう。やっぱりモーニングルーティンとかあるのかな? 変装は上手いのかな? 背後に立たれちゃいけないのかな?

いろいろ妄想ははかどりますが、いったん捨てましょう。

どこかズレてる佐藤。戦闘シーン以上にハラハラするのは…

佐藤(=ファブル)は特殊な環境下で生きてきたため、一般人としての「普通」が分かりません。

佐藤明と洋子の偽兄妹は潜伏中に面倒を見てくれるヤクザ・真黒組に挨拶へ。洋子に「Vネックで黒いシャツなんかダメ」と言われて急遽服を買いに行きます。

大阪では唯一、二人の正体を知る人になるため、敵意があると思われたくない。少しでも第一印象を良くしたい狙いです。

©️南勝久/講談社

えっ! 選んできた服、それ???

確かに敵意は感じませんが、違う、そうじゃない。衝撃的な経験をたくさんしてきたであろうヤクザですら、驚き固まっている。ツッコミが…このマンガにはツッコミがいない。

その他にも、バイトの履歴書の書き方が特徴的すぎたり、職場の飲み会で枝豆の皮を食べたり。

常識のズレが次々明らかに ©️南勝久/講談社

これまでの人生どうやって生きてきたの? って聞きたいくらい、一般人化が下手過ぎる。 しかしなぜか、まわりの人もふわっとそれを受け入れてしまうんですね。不思議なことに、戦闘パートよりも日常パートの方がハラハラさせられます。

シリアスとギャグのバランスが絶妙!

佐藤はプロとして、ヘタレな男を演じ続けます。

ボスに殺しを禁止されているので、弱い男の演技をしつつ、敵から逃げなければいけません。

まさにプロ!! ©️南勝久/講談社

オーバーな演技をしながらしっかり相手にも攻撃しているため、普通なら実はヘタレじゃないと気付かれそうなものですが…敵もポンコツが多いので意外と気が付かず。指の骨を折られてるのに。

また、ファブルの運転手やアシスタントを務めていた洋子の方も、戦闘能力はかなりのもの。同業者の男・鈴木と対峙した時も余裕で圧勝する実力の持ち主です。

クールな美女に見える彼女ですが、かなりの酒豪で、登場シーンの半分くらいは酔っぱらって爆笑。洋子の酔っ払いシーンはいつも本当に酷くて最高に面白い!

男たちは次々と洋子の餌食に ©️南勝久/講談社

ハードボイルドな戦闘シーンの後にもすかさずギャグパートがくる、そのバランスが絶妙です。しょっぱいポテチと甘いチョコを交互に食べている時の、あの感じです。もうずっと美味しい。

しかも、この塩梅が物語にリアリティを生み出します。

もしこのマンガが「伝説の殺し屋物語」だったら絶対にカットされそうな、そこに生活しているからこそ生まれるリアルさがきちんと描かれているんですね。

ヤクザだって鼻毛が出てたら隠そうとするし、殺し屋だって好きなお笑い芸人のLINEスタンプは欲しくなっちゃうよね。人間だもの。

食わず嫌いはもったいない! きっとあなたも『ザ・ファブル』の虜に

「伝説の殺し屋」というワードからは想像できない、ゆる~い日常。登場する人々は表社会も裏社会も関係なく、人間臭くてどこか愛くるしい。

何のために生まれて何をして生きるのか。アンパンマンに問われずとも、私たちはどこか頭の隅で考えながら生きている気がします。

暗殺を生業とし、死と隣り合わせで生きてきた佐藤の「生きること」に対する考えや価値観が、まわりの人との関わりにより徐々に変化していく。自らの強さに驕らず“普通”をひとつずつ謙虚に学ぶ佐藤の姿勢に、気付けば心惹かれていくのです。

佐藤や洋子のワケアリな過去が明らかになっていったり、殺しとは別の才能が発見されたり。

笑えて泣けて、ほっこりして。意外と読者の感情が忙しい漫画です。

もちろん、裏社会をめぐるスリリングなストーリーも楽しめること間違いなし!

もし過去の私のように食わず嫌いをしているのであれば、ぜひ一度試していただきたいです。

凝縮された旨味とあっさりとしたのど越しで、胃もたれせずに無限にいける味に出会えるかもしれません。