アメリカで大旋風を起こす"日本アニメ"の影響力

「ニッチな趣味」から世界的ポピュラーカルチャーに

アメリカで韓国ドラマ旋風が起こっていることは、日本でも知られているだろう。2022年には、社会現象となったNetflixドラマ『イカゲーム』がエミー賞の監督、主演男優賞等の6部門に輝いた。

​一方、アメリカの映像業界では、もうひとつの大旋風が生まれている。「Anime」と呼ばれる、日本のアニメだ。

なんと、2020年には「アメリカで最も需用のある非英語映像コンテンツ」の首位は日本語になっている。

調査会社Parrot Analyticsによると、2019年ごろには、非英語コンテンツ総需要における日本語シェアは25%程度だった。しかし、コロナ禍のストリーミングバブルでアニメ人気が爆発的に増加していき、2021年12月時点で断トツ首位の41.2%に到達した(次点スペイン語、韓国語)。

映画館でも躍進、”稼げるジャンル”になった「アニメ」

世界的快挙も増えている。2021年には、パロットアワードにて『進撃の巨人』が「世界でもっとも人気のあるシリーズ」に選出された。

これは、アメリカの大作ドラマである『ウォーキング・デッド』と『ゲーム・オブ・スローンズ』しか受賞したことがなかった名誉だ。さらに、Netflixは「全世界の会員世帯の半数以上がアニメを視聴した」旨を報告している。

北米アニメビジネスの主戦場はストリーミングとなっているが、映画館でも躍進が見られる。2021年に全米公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、外国語映画として史上最高のオープニング興行収入を達成し、二週連続の首位を達成。翌年の 『劇場版 呪術廻戦 0』 もトップ2に入る好成績を残した。

インフルエンサーのジョーイ・ザ・アニメマンは、西洋におけるアニメ受容の大変革について、このように説明している。

「アニメ映画は、もう教室の一部のオタクだけが観るものじゃない。クラスみんなで劇場に行くイベントになったんだ」

こうして、パンデミック危機により実写作品の制作やリリースが阻まれたハリウッドにおいて「アニメこそ世界でもっとも稼げるジャンル」と喧伝されるようになったのである。

アニメ投資が加速する世界で、日本が優位性を保つ理由

国際アニメビジネスのポイントは、急速な成長率と供給不足だ。

Parrotによると、2019年度、アニメは世界で三番目に人気な映像ジャンルとなった。犯罪ドラマ、シットコムに次ぐ全体4.74%の需用に比して、供給量は全体3.2%に過ぎない。そして、世界でもっともアニメを渇望している国は、大市場たるアメリカ合衆国である(次点フィリピン、ブラジル、フランス)。

アメリカらしいローカル需用も興味深いだろう。『アベンジャーズ』などのアメコミ映画が人気の同国で、もっとも供給が不足している高需要アニメジャンルは「スーパーヒーロー」。

これを満たす希少な作品こそ、学生たちがヒーローを目指す人気作『僕のヒーローアカデミア』である。この次に求められている「ホラー」や「超常現象」には、近年注目が増す『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズが該当する。

ちなみに、中国ではゲーム世界を舞台にした『ソードアート・オンライン』、ドイツではファンタジー『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』が、他国に比べて特段人気のあるシリーズになっている。

ハリウッドで加速するアニメ投資

こうしたジャンルの多様さも、アニメの強さのひとつだ。たとえば、2022年1月期のアメリカ市場では、学園ロマンスコメディ『古見さんは、コミュ症です。』が外国語ストリーミング人気作トップ5に入っている。

ハリウッドのアニメ投資は加速している。この二年間で、ソニー・ピクチャーズとAMCネットワークはアニメ配給企業を買収。Netflixに至っては、東京に製作支援拠点を設立している。それだけのジャンルになったため、中国、韓国などの競合スタジオの勢いも注視されている。

しかし、アナリストが提唱する日本の強さとは、漫画のIPパワーだ。原作となる人気漫画をつくりつづける文化基盤が確立されているため、アニメビジネスにおける日本の優位性は保たれる見通しとなっている。

※IP…(Intellectual Property/知的財産権)

映像コンテンツ以外にも与える影響

エンターテインメントファンとして期待できることは、クリエイティビティの相互影響だろう。今も昔も、日本の漫画やアニメには、米国作品の影響を示す名作が少なくない。10月より放送開始したアニメ版『チェンソーマン』のオープニングには、クエンティン・タランティーノ監督作などの米日映画リファレンスが散りばめられている。

抜群の国際人気を誇る『進撃の巨人』にしても、諫山創による原作は『ゲーム・オブ・スローンズ』等のアメリカのTVドラマと日本漫画の「いいとこ取り」が意識されていた。

もちろん、日本の漫画、アニメから影響を受けたハリウッド作品も、かねてより存在している。メジャーどころでは宮崎駿作品が意識された『リロ&スティッチ』や『攻殻機動隊』と近しい『マトリックス』、大友克洋作品を参照した『LOOPER/ルーパー』といったところだろう。

おそらく、今後、アニメ作品に影響を受けた海外作品は増えていくし、クリエイターもそのことをオープンに語っていくだろう。

リファレンス作品も刷新されている。「ピクサー版アニメ」と評された2022年作『私ときどきレッサーパンダ』は『らんま1/2』などのクラシックを踏襲しつつ、後半は『進撃の巨人』オマージュが炸裂する構成になっている。

英国製作となるが、12月日本公開予定のA24映画『MEN 同じ顔の男たち』も、監督が娘と観た『進撃の巨人』から影響を受けている。

映像コンテンツ以外でも、アニメの影響が目立っている。グラミー賞受賞ラッパーのミーガン・ジー・スタリオンは、雑誌の表紙で『僕のヒーローアカデミア』キャラクターのコスプレを披露した。大坂なおみとも対戦した10代テニス選手、ココ・ガウフは『鬼滅の刃』の「全集中の呼吸」を試合に取り込んでいるそうだ。

「ニッチな趣味」から世界的ポピュラーカルチャーになりつつあるアニメ。そのクリエイティビティは、思いもよらぬところで広がっていく。