働くすべての人に響くはず…トラブルまみれの印刷業界を描く漫画『印刷ボーイズ』シリーズ

つまるところ、トラブルに対する最終兵器は一択!

あらゆる仕事にトラブルはつきものだ。ときには理不尽とも言えるクレーム、そして利害関係者の間での板挟み…。

現実から目をそむけたくなる瞬間もあるだろうが、そんなときは是非、この漫画のページをめくってほしい。「自分なんぞまだまだぁ!」と己の頬を張り倒したくなること必至だろう。

リアル過ぎて印刷業界の人は吐いてしまうかも…

その漫画がこちらの『印刷ボーイズ』シリーズ。

  • 『いとしの印刷ボーイズ 業界あるある「トラブル祭り」』

  • 『印刷ボーイズは二度死ぬ 業界あるある「トラブル祭り」2

  • 『印刷ボーイズに花束を 業界あるある「トラブル祭り」3』

『印刷ボーイズ』シリーズの表紙 ©️奈良裕己

本書は、アイテム情報サイト『GetNavi web』で、『今日も下版はできません!」というタイトルで連載されている漫画であり、本稿執筆時点で3巻まで刊行中。

内容は、印刷会社の営業マンである主人公・刷元正を始めとするナビ印刷の仲間たちが、日夜問わず発生する数々のトラブル・クレームに右往左往する様子を描きつつ、印刷業界の知識まで学べてしまう業界漫画である。

が、たぶん印刷業界の中の人は最後まで読めないだろう。リアルすぎて途中で吐くと思う。

鉄のハートと職人技でトラブルを乗り越える「印刷会社」様

自分が広告会社で営業担当だった頃、印刷会社さん(いや、様と呼ばせてください)には本当にお世話になった。新人時代、自分になんの知識もスキルもなく、初任から2年くらいはクライアントと印刷会社を行き来するだけの"ちょっと言葉の喋れるバイク便"のごとき生き物だった私だが、当時は「もしかしたら、あらゆることの理不尽は印刷会社に流れ着いているのではないか」とまで思ったものだ。

広告制作物(たとえばポスターなど)をつくるとなると、一応の流れとしては企画→コピーライティング→デザイン→プレゼン→入稿→印刷→納品という前提でスケジュールがひかれる。

入稿した後も印刷までには様々な工程が…

『印刷ボーイズは二度死ぬ 業界あるある「トラブル祭り」2』より ©️奈良裕己

ところが、まずコピーライティングの時点でスケジュールが押していることは往々にしてあり、結果、デザイナーには火がついた状態で素材がわたる。当然ながら得意先へのプレゼンが一発で決まることなんてまずなく再プレゼンの繰り返し。

しかしながら、納品というのは得てして商品発売日から逆算して決まっており、最終ゴールの納品日をずらすことはできないため、結果、あらゆることの皺寄せが印刷会社に三角州のごとくなだれ込んでくるのだ。

それらトラブルを、鉄のハートと職人技、そして各セクションの連携プレイで乗り越えているのが印刷会社の方々なのである。

笑えるけど泣ける"業界あるある"がてんこ盛り

作者の奈良裕己さんは、大手の印刷会社の営業を8年ほど続けたのち、 2012年4月に独立して漫画家・イラストレーターになったそうな。それだけに本書に描かれるキャラクター造形はリアルだ。

ひたすら謝りつづける営業マン、無茶苦茶を言いまくるクライアント、印刷工場にいる職人気質の怖いベテラン、タブレットのデジタル写真を色見本として提出してくる掟破りの若手イラストレーターなど「くぅー!この人いるわー!」と唸らざるを得ないツボを抑えたキャラクター陣。

トラブルの度に赤羽に叱られる刷元

『いとしの印刷ボーイズ 業界あるある「トラブル祭り」』より ©️奈良裕己

さらに、胸ポケットに入れている赤ペンのキャップがあいてしまいワイシャツが真っ赤に染まったり、画像がなぜか先祖返りしていたり、デザイナーによる責了時の「ID」という修正指示が「エロ」と誤記されて刷り上がったり…笑えるけど泣ける印刷業界エピソードもてんこ盛り。

納品後に発覚し、刷り直しに…

『いとしの印刷ボーイズ 業界あるある「トラブル祭り」』より ©️奈良裕己

『印刷ボーイズ』の名セリフを座右の銘に…

もちろん、エンタメ漫画としての完成度も高く、特に『印刷ボーイズは二度死ぬ 業界あるある「トラブル祭り」2』での、業界最大手である帝王印刷とナビ印刷のコンペ対決は『美味しんぼ』の「究極のメニュー」VS.「至高のメニュー」の如し。

帝王印刷のクオリティに納得いかないクライアントがコンペ対決を要望

『印刷ボーイズは二度死ぬ 業界あるある「トラブル祭り」2』より ©️奈良裕己

シビアな色調再現を要求するカリスマファッションデザイナー・GOKOの要望で、ブランドの新作キャンペーンツールの印刷をめぐって品質対決することになるのだが、プレゼンバトル中のセリフが「そ…それじゃ5色刷りじゃねーか!汚いぞ!」なんて、しょうもなさ過ぎるのも最高だ。

そしてこの漫画は、印刷会社のみならず、懸命に働くすべての人に響く力があると思う。

つまるところ、トラブルに対する最終兵器は「謝罪」の一択。

本書のセリフ「誤植や刷り直しで人は死なないよ!」を座右の銘に、よーし、俺もとりあえずやるだけやったら、あとは頭下げにいくか!